紙の基礎知識
―株式会社ミューズの資料より抜粋―
紙の歴史
現在使われている紙の起源は西暦100年〜105年頃後漢の和帝時代(中国)の蔡倫によって発明完成され、ボロ布や麻などの原料を、臼で砕き、水で薄めて網で漉き上げる製法を用いたと考えられています。
この方法が次第に広がり、一方では高句麗を経て日本へ渡り和紙になり、他方では、シルクロードを経て欧州各地に伝えられ洋紙の源となりました。フランスでは連続式の抄紙機が発明され、ドイツの印刷技術の発明及び発達により、需要と必要性が高まりました。 一方、量の面でネックであった原料が、1840年以降に発明され急速に改良された木材繊維利用のパルプの出現により一挙に解決し、今日の紙となった。
紙の原料
植物を原料として処理し、その構成している繊維を集めたものをパルプと言います。
原料別に分類すると7種類で以下のようになります。
紙の原料別分類
・ 木材パルプ
・ ラグパルプ
・ リンターパルプ
・ リネンパルプ
・ 楮・三椏・雁皮パルプ
・ 非木材パルプ
・ 古紙パルプ(再生パルプ)
1)木材パルプ(ウッドパルプ)
・ 針葉樹(N材)・・・繊維が長く強い紙が抄けます。
・ 広葉樹(L材)・・・繊維が短く表面の平滑な紙が抄けます。
2)ラグパルプ
綿の紡績から出る繊維(綿ボロ)を利用しパルプにしたもので、紙の風合いが良く、特に耐久性の高い紙が抄けます。
3)リンターパルプ
綿の実に付着する短毛(綿クズ)を使用したパルプです。
4)リネンパルプ
麻を原料にしたパルプで、繊維が長く耐久性があり、ライスペーパー、航空便箋、聖書用紙などに使用されます。
5) 楮・三椏・雁皮
古くから和紙の原料として使用されています。
6) 近年期待されている非木材パルプ
環境に優しい非木材紙とは、木材パルプ以外の資源から作られる紙のことです。木材パルプ繊維に比べ、強度や肌合い印刷仕上がりなどで独特な個性があり、木材パルプとはひと味違う紙質が特徴です。従来からある和紙の原料やラグ、リンター、リネンなども非木材紙ですが、ここでは近年特に期待されている原料を紹介します。
・ケナフ
アオイ科の一年草で、東南アジアや中国アフリカ、カリブ海沿岸、米国南部などで栽培されています。靱皮部(表皮に近い部分)の繊維は針葉樹に似ており,木質部(芯に近い部分)は広葉樹に近い。靭皮部のパルプは強く風合いも良いため、ファンシーペーパー、証券用紙、包装紙など幅広く使用されています。
スケッチブックやクロッキー帳にもなっています。
・バガス
サトウキビから砂糖をとったカスの堅い部分を使用しています。バガスの特徴は風合いがよく優しい手触りで、名刺や便箋、ファンシーな用途に向いています。
・竹
イネ科に属し、繊維は比較的短いのですが、美しく細やかな仕上がりの紙が出来ます。
7)古紙パルプ(再生紙)
既に紙になっていたものをリサイクルする「古紙パルプ」は地球環境保護及び資源の有効利用を推進するために注目されています。近年段ボールや板紙など一般紙以外のファンシーパーパーの分野まで再生紙ブームがひろがっています。
紙の厚さ(秤量・連量)
1)
秤量
秤量とは紙の重量表示の方法で、一定面積あたりの重量を指し、1平方メートルあたりの重さをいう。表示はg/uを使います。
2)
連量
連量の連とは同一規定寸法に仕上げた紙1000枚を一括して表す単位です。(但し、板紙は100枚をもって1連とする。) 例えば4/6判の紙の場合は、4/6判が規定の寸法となり、1000枚の重量が連量となりkgで表す。
洋紙の重さは秤量で表します。
秤量(g/u)表示の場合は、同じ厚さの紙は寸法が違っても同じグラム数になります。
紙 肌
「コールドプレス」と「ホットプレス」について
ハンドメイドなどの単葉のもので より平滑な面が必要な場合は、乾燥させた後、更に亜鉛板に紙をはさんで多段ロールに通します。
本来の意味としては、その通常温のものを「コールドプレス」といい、ロールに熱を加えたものを「ホットプレス」といいます。しかし現在ではホットやコールドといった呼称も製法上の分類だけでなく、表面の区別にも用いられるようになりました。
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荒目 |
中目 |
細目 |
極細目 |
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アメリカ |
Rough |
Cold Press |
Hot Press |
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フランス |
Torchon |
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Fin |
Satine |
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その他の呼称 |
Rough |
Not |
Smooth |
Extra Smooth |
*メーカーによって違う呼称の場合もあります。
中性紙と保存性
欧米では早くから本の保存性が注目されており、強制劣化試験の研究が数多く行われてきた。酸性紙は20〜25年経過すると茶褐色に変色し、手で軽くもんだだけでバラバラに折れ砕け、しなやかさを失うといった典型的な劣化を示します。これに対して、中性紙は ややしなやかさを失い劣化は認められるものの、元のままの形を保持し、酸性紙とは劣化状態に極めて大きな差があります。
1.
紙を構成する成分による内的な劣化要因
ここでは、紙のpHについて触れておきます。物質に含まれる水素イオンの濃度を示す指数pHは7を中性とし、それ以下を酸性、以上をアルカリ性としています。今日の紙の大半はpH5〜6程度の酸性を帯びています。紙を酸化から防ぐには、このpHを7すなわち中性にすることが必要です。
近年紙は化学薬品による中性化が可能になり、特に画材、デザイン用紙は中性紙になってきています。中性紙と表示されている紙を選びましょう。
2.保存や使用中の状態によって決まる外的な劣化要因
・ 温度の影響
温度差が大きく変化すると、紙の伸び縮みが出て繊維を弱める。
高温にさらすと、額装した場合、ガラス内面に生ずる結露現象によりインクや絵具、紙が変色破損することがある。
・ 湿度の影響
相対湿度が70%以上になるとカビなどの雑菌が繁殖しやすく、又フォクシングといわれる黄変が起こる。
相対湿度が 30%以下になると変色したり、もろくなって弾力性がなくなることもある。
・ 光の影響
+ 紫外線は高周波エネルギーを発し、紙を変色させ作品の絵具(特に染料)の色も退色させる。
+ 赤外線は輻射熱を発し 紙の伸縮に影響を与え、もろくする原因となる
3.絵画を長期的に後世に残す方法
・
紙を選ぶ
理想としては、ラグ(綿ボロ)、麻、コットン100%を原料とする紙。こうした紙はpH7に保たれており、強度も強く、半永久的な保存性、寿命を誇ります。
・
額装する
作品に直接糊付けやテープ張りをしない。
マット紙は中性のものを使用し、額の裏板(ベニヤ)に当たる部分も厚手の中性紙を当て、保護する。
・
展示・保管
理想温度帯 15℃〜24℃ 理想湿度帯 40%〜50%
ガラスは紫外線を防ぐので良いが、重くなるし破損する危険もある。地震対策として アクリル板を使用する場合は紫外線カットタイプもあるが非常に高価である。
展示する場合は、蛍光灯より白熱灯が良い。150hで1m以上光源から離すこと。
空調や外気の影響を受けないところに置く。
保存する場合は理想環境(温度湿度)で、暗室がよい。
紙の抄造方法
1.
手漉法
水で薄めた原料を水槽等の容器に入れ、一枚ずつ手によってすくい上げ乾燥させる。
特徴としては 製法上、紙の繊維が絡んでいるので、強く伸縮が縦横均一である。強度や紙の風合いはよいが、製造効率は悪い。
2.
機械漉法
水で薄めた原料を機械により連続的に抄き乾燥させる方法。
特徴として、機械の進む方向に繊維が向いてしまい紙に弱い方向 【目】(後出)が出来る。機械の製造速度を 早めるほど、【目】が出来やすい。製造効率がよく、大量生産でき価格は安定する。
紙の目について
1 紙の目とは
紙を構成する繊維の向きを指し(流れ)ともいう。
「繊維配列」とは、抄紙機のワイヤーで繊維が流れの方向に並ぶことをいいます。
2
縦目と横目の決まり
縦目、横目を決める基準は繊維の流れ、つまり「目」です。その「目」を軸にして縦目にして仕上げるか横目に仕上げるかによって縦目の紙、横目の紙が出来上がります。
紙の目の見分け方
*見分け方
縦目の紙と横目の紙をそれぞれ折り曲げてみると、素直に折り曲げられる向きと、抵抗のある向きがあります。素直に折り曲げられる方向が目の方向です。水にぬらすと、目と平行にカールするのでよく分かります。この方向に丸めると丸めやすく細く巻けます。逆の方向に丸めると細く巻くことは出来ず、無理に巻くと傷(痕)が残り、きれいに戻りません。
*
製本・印刷に関すること
印刷、コピー、プリンター、製本などにおいて大変密接な関係があります。又、紙を丸める場合にも同様です。特に薄い紙を使って印刷する場合、紙の目と平行に印刷機に通すと印刷中に紙が切れる事があるので、紙の目の方向に通します。又、逆に 印刷できるぎりぎりの厚さの紙を通す場合、紙の目の方向に通すと輪転機やドラムに巻き付きにくくなるので、平行な向きに通した方かよい場合もある。
・コピー機・プリンター
コピーやレーザープリンターの場合、プリンター用紙より薄い紙を紙の目と平行に通すとドラムに絡まって詰まることがあります。紙の目の方向に沿って通すと詰まりません。但し厚い紙の場合は、ドラムに 巻きつき易いように平行に通した方がよい場合もある。
・製本
製本する場合、紙の目と平行に綴じると本のめくりがよくなります。
*表裏の見分け方
ウォーターマーク(透かし)有りの紙の場合はこれが正しく読める方が表です。
ウォーターマーク(透かし)無しの紙の場合、一般的な紙は製造時 原料が網の上に乗ってくるので、紙の裏面にかすかに網目が残る。従って網目が見える方が裏面である。赤インクで書いてみて滲む方が裏面。
水彩紙の場合は、毛布によって紙の表面の凸凹を作るので、一般的には、この凸凹がしっかり見える方が表面である。
機械抄紙機
機械抄紙方法で使われる機械は2種類に分類されます。
1長網抄紙機
回転している長く平らな金網の上に原料を流すことにより、水分だけが網の目から落ち、残った原料を次の網に移し、再びロールで水分を絞ってから乾燥筒(ドライヤー)へ運ぶ。運ばれた原料は、加熱した沢山の筒の上を流れている間に乾き、紙となります。この方式ではワイヤーパートでワイヤーを振動させ繊維を均一に分散、絡み合わせることにより高速で紙を抄くことが出来ます。新聞紙や印刷用紙などのように大量に抄造する紙に向いている方法である。
2円網抄紙機
丸く巻きつけた網に原料を流すと 水は網の目をくぐって中に流れ込み原料だけが網の表面に張り付きます。これを毛布に乗せロールで水を搾り、回っている鉄製の大きな乾燥筒(ドライヤー)に張り付けます。この筒は蒸気で加熱してあるので紙はすぐに乾きます。
この方法では原料が入っている槽を増やすことにより長網では抄けない分厚い紙が抄けます。しかし高速になると遠心力と抵抗が増すため、繊維が機械の進む方向に向いてしまい地合が悪くなります。
++ 有名なフランスのアルシュ紙などは、この方法で機械の流れる速度を遅くし、原料の繊維が混ざった状態で抄き上げます。網の途中に等間隔に(紙の仕上がり寸法)ギザギザの出っ張りを付け、その部分を薄くさせて抄き上がった時に 一枚ずつ切れるようにしてある。この方法で抄かれた紙は手漉きのように繊維が絡み合い強度が強く四辺に耳が付いた紙に仕上がります。この方法をム(モ)ールドメイド(半機械漉)と呼ばれる。
薬品・填料・染料
電気機器の部品などに使われるコンデンサーペーパーやプリント配線基盤用紙などの特殊紙以外の紙は、それぞれの用途に適したもの(薬品など)を入れています。
1.
サイズ剤
インクや絵具などの滲み止めが目的で、以前は松脂から取れるロジンサイズ(酸石灰)が長年使われてきました。そのサイズ剤を繊維に定着させるために硫酸バンドが使用されていました。しかし、この硫酸バンドのために紙そのものが酸性になってしまい、長年保存する間に紙を劣化させボロボロニなる可能性が大きいことから、近年、紙を中性化する研究がなされ、硫酸バンドを使わずにすむ中性サイズ剤が開発されました。
2. 填料
填料とはクレー(白土・ロウ石などの粘土)やタルク(滑石)などの総称で、最近は炭酸カルシウム(石灰石)も使われています。これを使うことにより、紙の平滑度や印刷適正などを高め、白色度を増し、裏抜けを防ぎ、紙の伸縮を減らし、柔軟性を与えます。
3. 染料
特に印刷用紙などは染料が入っている場合が多く、単行本や学習参考書などは黄色やオレンジ系の色がつけてあり、長時間本を読んでも疲れないように工夫されています。又、一般に白いと思われる紙にも赤系や青系の染料が入っていることも多く、人間の視覚に白いと感じさせる場合には蛍光染料を使用することもあります。
以上